皆さん、こんにちは。
元レンジャー隊員のアクアと申します。
私が退職してから出会った方に、私が元自衛隊であることが分かると、自衛隊の入隊経験がない方からよく質問されることの一つに、「自衛隊の訓練ってきつくない?」と言うものが有ります。
もちろん、基本的に自衛隊は戦争を想定して、万が一日本が他国に攻め込まれた時に日本を守る事が使命ですので、体力は必要ですし、戦争という極限状態で力を発揮する為に精神力も必要になります。
とは言いながら、当たり前ですが22万人〜23万人の自衛官がいて、屈強な人間ばかりなわけがありません。
それぞれが、それぞれの役割をしている事で成り立っている組織です。
もし今、自衛隊に入ろうか迷っていたり、既に入ってみたものの、これからどんなキツイ訓練が待ち受けているのか、心配な方もいるかも知れません。
そこで今回は、そんな方の為に、自衛隊に4年間在籍した私が
- 前期教育隊でする事
- 部隊配属後にする事
- まとめ
の順にそれぞれの場所でする訓練や私生活の事を、お伝えしていきます!
前期教育隊でする事
私の場合は陸上自衛隊に在籍していましたので、陸上自衛隊でのお話になりますが、まず、自衛隊に入隊すると「教育隊」に配属されます。
この教育隊は、前期と後期に分かれていて、それぞれ3ヶ月間あります。
前期の教育隊については、入隊の入り口になった自衛隊地方連絡部の最寄りの教育隊に入隊する事になります。
ちなみに、私の場合は大阪の地方連絡部から入隊しましたので、前期の教育隊は滋賀県にある大津駐屯地でした。
前期の教育隊の目的は、自衛官としての心構えや自衛隊の基本的な知識と体力練成にあります。
教育隊では、課業時間(勤務時間)は、8:15〜17:00になります。
その後、食事→お風呂になりますが、そこから結構やることがあります。
自分の衣類は自分で洗濯しなければならないですし、訓練で使う戦闘服も自分でアイロンがけをしないといけません。
そして一番時間がかかるのが、意外にも「靴磨き」です。
私が現役時代は訓練で使う靴は「半長靴」という足の脛あたりまである靴でしたが(現在は戦闘靴)、この半長靴の靴先を靴磨きのクリームでピカピカに磨き上げる事を要求されます(顔が映るくらい)。
私が使用していた靴クリームは「KIWI
前期教育隊の訓練で日常的にしている事は、
- 基本教練(敬礼や行進などの動作)
- 射撃訓練
- 戦闘訓練
- 体力練成
等ですが、やはりこの中で一番キツイのは、戦闘訓練でしょう。
一般の方が自衛隊の訓練でイメージしている「ほふく前進」はこの時使います(なぜかお酒の席で聞かれることが多い)。
特に夏場の戦闘訓練は結構キツイです。
私の同期は午前中の戦闘訓練が終わって、体がご飯を受付けず、1.5ℓのジュース5本をガブ飲みしてました。
そして前期教育隊の後半には、前期教育の集大成ともいうべき「演習」があります。
それは戦時下で山に入った時にするべき、基本的な行動を教えられるのですが、この中で「行軍」が一番キツイ訓練になります。
銃や背嚢(はいのう)を背負って30kmくらい隊列を組んで歩くのですが、必ず数名の脱落者はでます。
※背嚢(はいのう)とは、リュックみたいなものです。
という事で、所々キツイ場面はありますが、それでみんなについて行けなくても、辞めさせられるわけでもないので、個人的には学校の部活の方がキツかった気がします。
前期教育隊の私生活面でいうと、居住空間は1部屋10人くらいで共に生活することになります。
ですので、プライベートな空間はありません。
土日も入隊後3週間目くらいから許可されますが(要事前申請)、その日のうちに帰って来なければなりません。
私の場合は、滋賀県の大津でしたので、駐屯地の周りには、な〜んにもありません。
ですので、土日は体育館でバスケットボールなどをして遊んでいました(健全!)。
時には一緒にハメを外せる仲間と共に汗を流したこの期間は、やっぱり面白かったですね。
人生でこんなに長い期間共同生活を送った事が無かったので、そういう意味でも刺激的な期間になりました。
そして前期の教育隊が終了すると、後期の教育は、より専門的な知識と技術の習得に変わりますので、ほとんどの同期とは別の駐屯地へ行くことになります。
隊員それぞれが後期教育で行きたい部隊を第3希望まで出して、後期教育の場へ旅立っていきます。
後期教育隊でする事
後期教育隊では、より専門的な内容になりますが、部隊は色々ありますが、そもそも枠がない部隊には行けません。
部隊の種類としては、
- 普通科(歩兵)
- 機甲科(戦車)
- 野戦特科(火砲)
- 高射特科(ミサイル)
- 情報科(偵察)
- 航空科(ヘリコプター)
- 施設科(橋を作ったり地雷処理)
- 通信科(通信全般)
- 武器科(武器管理)
- 需品科(糧食や燃料など)
- 輸送科(大型車両)
- 化学科(除染)
- 警務科(自衛隊の警察)
- 会計科(給料など)
- 衛生科(医療)
- 音楽科(音楽)
等がありますが、私の同期では空挺団(パラシュート部隊)に行った隊員もいました。
ちなみに私は、普通科でした。
普通科の後期教育隊ですることと言えば、大雑把にいうと前期教育隊の復習です。
ただ、演習も泊まりがけ(泊まりと言っても山の中です)になりますので、より強度が強くなっていきます。
「演習」自体は戦争が起こっている事を想定して進んでいく訓練で、教育隊は最も後方にいるので、大した事はしません。
そして私生活においては、居住スペースは相変わらず10人程度の共同生活になりますが、土日に外泊が可能になります。
後期教育隊でも職種によって多少違いはありますが、前期教育隊の延長という感じで、前期教育隊の時点で、自衛隊生活が無理だと思われたら、その後も無理だと思いますので、正直な所、辞める場合はこの時点で辞める方がいいかなと思います。
自衛隊を退職する後悔しないタイミングや元自衛隊にオススメの就職先に関しては別の記事で紹介しているのでこちらも参考にしてくだい。
部隊配属後にする事
無事に教育隊を卒業すれば、ようやく部隊配属になります。
部隊配属になり、それが普通科なら、大雑把に言うと、年間を通して一番重要な事は、師団・連隊・中隊の検閲(実戦の状況を想定した訓練をして、それをお偉いさんが審査するもの)で、その次に射撃・銃剣道・持続走などの各競技会、になりますので、検閲や競技会が近づけば、その訓練を重点的に行います。
検閲に関しては、基本的にほぼ全員参加になりますが、競技会は少数精鋭での参加になりますので、その隊員の得意なもの(射撃・銃剣道・持続走)を、ある程度専門的に鍛錬していくことになります。
そして、たまに起こる災害派遣(ニュースにならない災害派遣が意外とあります)や定期的に行う草刈りなどで一年が過ぎていきます。
部隊配属になっても、基本的な訓練は変わりませんが、中隊毎だと糧食(食事を作る係)や消防、車両整備などを専門的にする隊員も出てきます。
私も自衛隊(普通科)の中では、いろんな部署にいったり、災害派遣やレンジャー訓練など、ほとんど経験できる事はしてきて、キツさで言うと、レンジャー訓練は除いて、やっぱり検閲がキツイかもしれません。
と言っても、それによって辞めたいと思うほどの事ではありませんでした。
ただ、数日間山の中に入りっぱなしですので、汚い・臭い・長いのが嫌だったくらいです。
それでも自衛隊の中でも楽な部署にいると、ずーっと楽という面もあるので、一括りには出来ません。
例え体力的についていけなくでも、変な話、給料が減るわけでもないですし、逆に仕事が終わってから、自主的に体力づくりの為に走ったり筋トレをしても給料が増えるわけでもありません。
このあたりは、良くも悪くも公務員なんです。
私は熱望して自衛隊に入隊したわけではないので、いつでも辞めたい時に辞めるつもりでしたが、結局2任期満了まで居ましたので、個人的には居心地が良かったという結論です。
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まとめ
いかがでしたか?
今回は、元自衛官である私が『自衛隊入隊が不安なあなたへ!教育隊から部隊配属までを元自衛官がリアルな体験から伝えます!』と題してお伝えしました。
今から自衛隊に入隊しようと思われている方や、既に入隊したものの、これから自衛官としてやっていけるかどうか不安になっている方もいることと思います。
体力勝負的なところもありますので、もちろんキツイ事はありますが、どこかの組織に入れば、それなりのキツさはあると思いますので、どうせなら人生経験の一部として、楽しんでみてはいかがでしょう?
きっとその先に、あなただけの充実感を味わえる日がくるでしょう!
いつもありがとうございます。
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